『沖縄タイムス』の「復帰35年揺れた島 揺れる島」シリーズで、「太平洋の島として(上)」と題する私の原稿が掲載されましたので、ご紹介します。2007年2月6日 松島泰勝
「日本復帰」後、格差是正、経済自立を目指したが、かえって日本政府への従属度が深まった。これからの琉球はいかに従属構造から脱し、自治を実現するかが問われている。
日本全体で分権化が進む中で、沖縄県では国との関係をさらに強化しようとする知事が選出された。
自由貿易地域、情報通信特区、金融特区等も優遇措置に守られ、大学院大学も国頼みである。「経済自立のための基盤固め」と称して、インフラ整備をしてきたが、島の環境が破壊されただけで経済が自立する兆候はみえない。
琉球だけの優遇措置は期限付きの効果しかない。WTO、APEC、二国間自由貿易協定等にみられるように世界中で規制緩和、自由貿易が進むなかで、琉球だけが制度的に優遇され続けることはありえない。
例えば米国領土の北マリアナ諸島は観光業収入と並ぶほど衣料製造業収入が多い島であった。
アジア諸国の企業が投資し、賃金の安い中国人労働者が生産した衣料品を米国本土に移出してきた。
しかし、中国がWTOに加盟し、貿易上の規制撤廃の動きが進んだことにより、北マリアナ諸島は、安い価格で衣料品を米国市場に輸出する中国との競争に直面するようになった。
二〇〇五年頃から衣料工場が次々と倒産し、今年は約一四〇〇人の従業員を抱える、サイパン最大の衣料工場も倒産した。
北マリアナ諸島は特別な移民法、労働法を有し、外国人労働者を低賃金で働かせ、関税なしで米本土に移出できるという「優遇措置」が適用されていたが、その効果も低下している。
日本政府は琉球の経済自立を目的にせず、基地問題に対処する政治的取引材料として、「規制緩和」「優遇措置」を小出しに認めてきた。世界の経済状況、企業の経営環境にそぐわない「規制緩和」はすぐにだめになる。
また琉球はダブリン、香港、シンガポール等を目標としてきた。しかし、世界情勢は急速に変化し、目標とされた地域はさらに進化を遂げている。何時までたっても追いつかず、失敗に終わる。
自由貿易地域、特別自由貿易地域が成功せず、情報通信特区、金融特区が期待通りに発展しない理由はそこにある。
今年は「復帰」して35年目になる。「日本復帰」という言葉は再考を要する。復帰とは「もとの地位・状態に帰ること」を意味する。琉球の戦前の地位は「沖縄県」であったが、琉球の「もとの地位・状態」をさらに遡ると「琉球国」または「琉球文化圏」となる。
「琉球国復帰」「琉球文化圏復帰」「特別な自治権をもった地域の樹立」等の選択肢があった。日本を「祖国、母国」としたために、「日本復帰」後、琉球を全面的に同化しようとする政治経済、文化体制が敷かれた。
格差是正とは日本と同一の基準を琉球に当てはめることである。「復帰後」の開発・統治体制が今後も続くなら、琉球は日本の小さな辺境としての意味しかもたなくなるだろう。
日本との違い、アジア太平洋地域との関係性を強化するという異化、分権化、自治・自立の道を大胆に推し進める必要がある。
日本からのみ多大な補助金が提供されるという従属状況から脱却し、多様な関係性をアジア太平洋地域との間で形成することが琉球自立への道である。そのためにも外交権の行使を含む自治権を回復する。
特に台湾、中国との関係強化により琉球の経済自立への道も開かれるだろう。元々琉球は外交権を有していたが、1879年に日本政府が奪ったのである。日本政府との交渉、アジア太平洋地域からの支援等により外交権を回復する。
人、物、金、企業、組織、情報、文化等の流れを日本一辺倒からアジア太平洋諸国に分散させる。現在、琉球にとって日本しか選択肢がなく日本への従属度が深まったといえる。選択肢が多いほうが琉球の自立度は高まる。
本来、日本政府と琉球とは、日本政府から補助金が与えられ、規制緩和が認められるという上下の関係だろうか。琉球は1879年まで国家であり、日本とは対等な関係であった。同格の地位にある地域として仕切り直す必要がある。
日本国憲法に沿った法制度上の改革を進めるとともに、琉球の政治的地位に関する交渉を日本政府との間で始めるべきである。琉球人の大部分は1972年において「復帰」を選択した。しかし、自己決定権の行使は一回きりで終わりではない。
状況を変革する必要があれば何度でも行使できる権利である。かつて独立の国家であり、現在、政治経済的な抑圧状況下にある琉球は当然もっている権利である。国家でなかった太平洋諸島も独立し、国連の一員として大国と同等の地位を有している。
仏領ポリネシアはフランスの領土であるが、2000年、大幅な内政権を獲得するとともに、太平洋島嶼国に対する外交政策を実施する権利をも手に入れた。琉球はいつまで「沖縄県」という従属的な地位を甘受し続けるのだろうか。
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